猫頭の文房ブログ

人間を獣頭人身で「分類」すると、私めは猫頭。その書斎もとい文房(自室)日常ブログ

「憂い来たるとも」

11月に入りました・・例の三略中です・・
カシオのエクスワードですが、非常に電池が早く終わるなぁ…‥と思ったら、USBでパソコンに接続しておくようにとあった…‥
ついでに、パナソニックの充電池充電器(単3電池)も購入した・・・
(今頃買う、のんきな私・・前のは単4電池でよかった)

秋は漢詩気分ですね
「秋日」  耿湋(こうい)

返照入閭巷       返照(へんしょう) 閭巷(りょこう)に入る
(夕日の光が村里に さしこんでいる)
憂來誰共語       憂い来たるとも 誰と共にか語らん
古道少人行       古道(こどう) 人の行くこと少(まれ)
秋風動禾黍       秋風(しゅうふう) 禾黍(かしょ)を動かす
(ただ秋風ばかりがイネやキビを揺り動かしているばかりだ)

(『漢文名作選』 鎌田正監修 大修館書店 より)
芭蕉がこの詩を踏まえて、「この道や行く人なしに秋の暮」と作句したというが
芭蕉よりこの、耿湋の「憂い来たるとも 誰と共にか語らん」のほうが いいです(私には)
「漢文名作選」には秋の漢詩はあと6挙げられていたので、ついでに上げておきます

杜牧『山行』

遠上寒山石径斜  遠く寒山に上れば石径斜めなり
白雲生処有人家 白雲生ずる処人家有り
停車坐愛楓林晩 車を停(とど)めて坐(そぞろ)に愛す楓林の晩
霜葉紅於二月花  霜葉は二月の花より紅なり

紅葉を愛でている・・なんということない詩かな?
下のは、親友もいて、絵になる秋景色・・

王維『輞川輭居贈裴秀才迪』

寒山轉蒼翠 寒山(かんざん)転(うた)た蒼翠(そうすい)
(寒々とした寂しい秋の山は、ますます緑の色を濃くし)
秋水日潺湲 秋水(しゅうすい) 日に潺湲(せんかん)
(秋の川の水は、毎日快い響きを立てて流れている)
倚杖柴門外 杖に倚(よ)る柴門(さいもん)の外
(杖によりかかって わが隠者風の住居の粗末な門の外に立ち、)
臨風聽暮蟬 風に臨(のぞ)んで暮蟬(ぼせん)を聴く
(風に吹かれながら夕暮れに鳴くく蝉の声に耳を傾けている)
渡頭餘落日 渡頭(ととう)落日(らくじつ)余(のこ)り
(渡し場のあたりには、夕日の光がかすかに残り、)
墟里上孤煙  墟里(きょり)孤煙(こえん)上(のぼ)る
(静かな村里には、ひとすじの(炊)煙がたち上っている)
復值接輿醉 復(ま)た值(あ)う 接輿(せつえん)の醉いて
(大昔の隠者の接輿のような(我が友)裴迪が)
狂歌五柳前 五柳の前に狂歌するを
(陶淵明の家にも例えるべき我が家の前で、酒に酔って狂った詩を歌うのに会った)

山水画みたいだ・・
次は、
銭起『谷口書斎寄楊補闕』「谷口(こつこう)の書斎にて楊補闕(ようほけつ)に寄す」
 

泉壑帯茅茨
雲霞生薜帷
竹憐新雨後 竹をば憐む 新雨の後(のち)
山愛夕陽時 山をば愛す 夕陽(せきよう)の時
閑鷺栖常早
秋花落更遅
家童掃蘿径
昨与故人期

3,4の対句が良いという〜〜〜

杜甫『秋興 八首其一』(秋の感興)

玉露凋傷楓樹林  玉露凋傷(ちょうしょう)す 楓樹(ふうじゅ)の林
(玉のような白露が、楓の林をしぼませ)
巫山巫峽氣蕭森  巫山(ふざん)巫峽(ふきょう) 氣 蕭森(しょうしん)
(巫山・巫峽のあたりには、静寂・厳粛で身のひきしまるような秋の気が立ち込めている)
江間波浪兼天湧  江間(こうかん)の波浪(はろう) 天を兼(か)ねて湧き
(長江の川波は、天を包むほどに高くわき立ち、)
塞上風雲接地陰  塞上(さいじょう)の風雲 地に接して陰(くも)る
(とりでのあたりの風雲は、地面に届くほどに低く垂れ込めている)
叢菊兩開他日涙  叢菊(そうきく)兩(ふた)たび開く他日(たじつ)の涙
(野に群がる菊が、花を開くのを見るのは、都から旅に出てからこれで二度目、
それにつけても、過ぎ去った日の涙の思い出が、今また蘇って、新しい涙とともに望郷の思いを掻き立ててくる)
孤舟一繋故園心  孤舟(こしゅう)一(いつ)に繋ぐ 故園(こえん)の心
(船旅の途中、一そうの小舟を、ただひたすらに、故郷を思う心を込めて、つなぎとめているのだ)
寒衣処処催刀尺  寒衣(かんい)処処 刀尺(とうせき)を催(うなが)し
(今は冬着の支度をする季節、あちこちで、裁縫をせよと急き立てているかのように、)
白帝城高急暮砧  白帝城 高くして 暮砧(ぼちん)急なり
(高くそびえる白帝の街のあたりでは、夕暮れの砧の音ばかりが忙しく響いている)

やっぱり杜甫でしょうか!!あとは許渾『咸陽城東樓』
http://www.kangin.or.jp/what_kanshi/kanshi_B20_3.html

行人問うこと莫れ 當年の事

うむ・・
最後は、白居易『聞夜砧』 

誰家思婦秋擣帛 誰が家の思婦か秋に帛(きぬ)を擣(う)つ
月苦風凄砧杵悲 月苦(さ)え風凄(すさまじ)く砧杵(ちんしょ)悲し
八月九月正長夜 八月九月まさに長夜、
千聲萬聲無了時 千声万声了(やむ)る時なし
應到天明頭盡白 まさに天明に到らば頭ことごとく白かるべし
一聲添得一莖絲 一声添え得たり一茎の糸

砧の一声一声が、聞いている作者の頭の白髪を増やしていくと・・