猫頭の文房ブログ

人間を獣頭人身で「分類」すると、私めは猫頭。その書斎もとい文房(自室)日常ブログ

イチジク話

エジプトでなくヨーロッパでもイチジクは聖樹であったかどうかということ
ここで、文献検索してみますね
(horagaiさんからの文献指南で結構揃っているのだ)


「英米文学植物民族誌」(加藤憲市著)によると
「ローマ帝国の建設者RomulusとRemusは、Ruminalisという
大きなfig treeの木陰でオオカミの乳を吸って育ったといい、
古代ローマ人にはfig treeは聖木で、これを新年の贈り物にしたという。」
「キリストを裏切ったJudasはfig treeでくびをくくったという。
シシリアではこの木を忌み、イギリスでもこの木は亡者のたむろ場所
しかし、聖家族がHerod王の刺客に追われていた時、この木が幹を開いて
隠れ家を与えた・・
初期キリスト教徒には神聖な木とされた。」

西洋シンボル事典(キリスト教美術の記号とイメージ)によると
「中世の図像において、しばしばリンゴの木の代わりに認識の木として楽園の中に描かれた」
*1


プリニウスの15巻−20には、ローマのロムルスとレムスのイチジクの木には
ルミナリスという名が与えられているが、
ルミスというのは乳房という意味の古語だからだという。
(オピディウス『行事暦』2−411にもある由)


プリニウスより前のテオプラストスの「植物誌」(紀元前300年)には
イチジクの実の成熟を促すイチジクコバチの話などあり
(※イチジクコバチがイチジクの種から生まれる、とされたものの、
人工交配はきわめて古い時期から行われたがわかる)


ド・フリースの〈イメージ・シンボル辞典〉には、
・イシュタル、アルテミス、アフロディテと関連する・・とあるが、
アルテミスがイチジクの木に姿を変えたとき、それは〈たくさんの乳房をもつ木〉であった
・ディオニュソスは冥界の入り口にイチジクの木を植えた
・その下にカリュプディスが住んでいたイチジクの木の幹は、
おぼれそうになったオデュッセウスを救った
//という感じですが

大阪はイチジクの栽培がお盛んなんですよね〜〜

*1:いちじくの木はきわめて否定的な意味を帯びることがあるが、
通俗語源説によれば「悪」が「リンゴ」に由来するように
「罪peccare」はヘブライ語の「いちじくpag」に由来するとされた事に基づくか、
あるいは、アダムとエバのイチジクの帯のためか、さもなければ、 すでに早くからユダヤ民族に対する有罪宣告と理解されていた、
実りのないイチジクの木に対するイエスの呪い(マタイ21,18)に基づいている