ダンテ『神曲』寿岳文章訳
「ひとの世の旅路のなかば
ふと気づくと
私はまっすぐな道を見失い
暗い森に迷い込んでいた。
ああ、その森のすごさ
こごしさ、
荒涼ぶりを
語ることはげに難い。
思いかえすだけでも、
その時の恐ろしさがもどってくる!
その経験の苦しさは、死にもおさおさ劣らぬが、
そこで巡りあったよきことを語るために、
私は述べよう、そこでみたほかのことどもをも。
どうしてそこへ迷いこんだか、はきとはわからぬ。
ただ眠くてねむくてどうにもならなかった、
まことの道を踏み外したあの時は。」
こごしさってなにかな。
神曲 地獄篇 (河出文庫), 平川 祐弘 (翻訳)
「人生の道の半ばで
正道を踏みはずした私が
目をさましたときは暗い森の中にいた。
その苛烈で荒涼とした峻厳な森が
いかなるものであったか、口にするのも辛い、
思いかえしただけでもぞっとする、」