猫頭の文房ブログ

人間を獣頭人身で「分類」すると、私めは猫頭。その書斎もとい文房(自室)日常ブログ

もうすぐ絶滅するという紙の書物

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(2010)
記号学者のウンベルト・エーコ(1932〜)と脚本家のジャン=クロード・カリエール(1931−)の対談集ですが、「終身学習刑」という言葉を発見・・・

私達は終身学習刑を宣告されている。
いわゆる原始社会では変化するものは何もなく、老人は力を持っていた・・というのも老人は子や孫に知識を伝えたから。
世界が絶えず革新的に変化している現代では、子どもたちが親にエレクトロニクスを教える。
では親は子ども達に何を教えるのか?

インターネットはあらゆる情報が何でもかんでも信憑性の高いものからそうでないものまで手に入る
そのフィルタリングを教える・・のか?????

「私はいまや教壇に立つことができません。人間の寿命がいくら長くなっても、知識の世界が絶え間ない革新世界であり、人間がその世界の何かを完全に把握できたのは必然的に限られた期間だけだったと事実はごまかしようがない」

フィタリングは本についてもあった・・検閲、焚書などなど

「人類が文字を獲得して以来蓄積してきた知識と夢想を封じ込めている書物・・
本は一度発明したらスプーンやハンマーや鋏と同じで、それ以上うまく作りようがないものであり、物としての本のバリエーションは500年前と変わっていない。
書くという行為は手の仕事の延長線上にある。
文化とは全てが忘れられた後になお残るものである」・・・・・といった話

因みに[過去についてのわれわれの知識は馬鹿や間抜けや敵が書いたものに由来している]という章題があった(~_~;)
いや、そこだけ取り上げちゃいけませんが(笑)
書物の神聖化を問い直す、「珍説愚説礼讃」・・

エーコの書物のコレクションは、疑似科学、珍説奇説、神秘学、架空の言語に関するものがテーマであり、
つまりエーコは、まちがいやウソに関連した書物だけを収集している、というのだが・
「人類はまさに途方もない存在で、火を発見し、都市を建設し、見事な詩を書き、世界を解釈し、神話の神々を絵に描きだした。
しかし同時に同胞を相手に戦争を繰り返し、互いをだまし合い、環境を破壊しつづけてきた。
知的で崇高な美徳と低俗な愚行を合わせて評価すれば中くらいの点数になる。
愚かしさについて語るのは、
半分天才で半分馬鹿というこの人間に対するオマージュ」

エーコは馬鹿と間抜けと阿呆の定義をしようという
馬鹿はあるきまった時宜にさいして、いうべきでないことを言ってしまうような人〔うっかりへまをする 軽率〕
カリエールは、
馬鹿は結論を出したがるという
阿呆というのは間違えるだけでは飽き足りない、間違った考えを声高に主張して皆に聞いてもらいたがる・・という
愚かさとは、ぬけぬけと一貫して阿呆な発言をすること(~_~;)
我々が一個人の中に見出すのは、たいていこれら三つの混合だという・・・。

キルヒャーの世界図鑑―よみがえる普遍の夢

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ヴォイニッチ写本の謎

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エーコは、キルヒャーの本は最初の著作以外全部持っているという、その中でいちばん興味深いのは「ノアの方舟」だそう
キルヒャーの猫ピアノ!?http://blog.goo.ne.jp/mh0914/e/c0df3b9f495925b3d5dfaf5153cdd295

あと、エーコは、傑作は最初から傑作なのではなく傑作になっていくのだ、『モナ・リザ』はたくさんの解釈が画布の上に何層にも蓄積し、姿を変えた
『ハムレット』が傑作になったのは、われわれの解釈に逆らうから(とエリオットが言った通り)という
「シェイクスピアの戯曲は、書かれた当初よりきっと豊かになっている、なぜならそれらの戯曲は、シェイクスピアが紙にペンを走らせて以来、積み重ねられた偉大な読みと解釈をすべて吸収してきたからだ」

薔薇の名前〈上〉

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論文作法─調査・研究・執筆の技術と手順─ (教養諸学シリーズ)

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もうすぐ絶滅するという紙の書物について

円柱

なんですか、このスカートは・・・